<糸の太さ(糸径)に関する疑問解決シリーズ 第4回>

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<糸の太さ(糸径)に関する疑問解決シリーズ 第4回>

糸の太さ(糸径)に関する疑問解決シリーズ、最終回となる第4回は、金属糸についてです。

 

第1回から第3回まで、ナイロン・フロロカーボン・PEラインについて解説してきました。
ナイロン・フロロカーボン・エステルは糸の太さが号数に反映、PEラインは一定の長さあたりの重量が号数に反映されることが理解できました。
それでは、主に鮎釣り用に使われる金属糸、メタルラインについてはどうでしょうか。
こちらも、平成24年に日本釣用品工業会で以下のように決められています。

http://www.jaftma.or.jp/standard/pdf/kinzoku.pdf

補足説明にあるように、今まで見てきた素材と異なり、単糸も複合糸も同じ規格になっていることです。
まずは金属糸と呼ばれる糸には、実際にどのような種類があるかを見ていきましょう。

1.単線メタル

一種類の金属からなる糸で、一般的に糸径は細く、凹凸が少ないため、糸径の測定ばらつきがなく安定しています。金属の種類も複数あり、比重が異なります。
タングステンの比重:19.3
チタンの比重:4.5
と金属糸としては、タングステンが最も重く、鮎釣り用にも良く使われています。
糸の特徴として、強度はナイロンの数倍あり、糸が重いので早く深く沈められること、細い糸で鮎を操作でき、伸びがなく感度が非常に良いことから競技でも良く使われるようになり、メタルラインの登場により、鮎釣りが大きく変わったと言っても過言ではないでしょう。
欠点は糸が折れると簡単に切れてしまうことや、結んで使えないため、「編込み」と言われる
「編込み機」を使っての仕掛け作りが必須で、誰もが簡単に使える糸とは言えない素材でもあります。 

 

2. 複合メタル

単線メタルの欠点を補うように、各社から発売されたのが、現在主流になっている「複合メタル」です。
複合メタルには、様々な構造があります。

A:撚り糸タイプ 

撚り糸とは、複数の糸をより合わせて一本の糸に仕上げていくもの。
芯の糸には、強度のある新素材を使用し、その上からタングステン等の金属の細線を巻き付けるようにして仕上げます。
この時、巻きつける角度が直線に近ければ、ゆるい撚り方になり、糸径は細くなります。
逆に芯の糸に対して巻きつける角度が垂直に近くなれば、きつい撚り方になり、すき間が少なく、糸径は太くなります。

また、巻きつけ方は、一方にだけ巻きつけるパターン

さらに反対方向から巻きつけるパターン(クロス 等と表現される)があります。

 

その他、違う種類の金属、タングステンとステンレスとを撚りあわせた、金属糸だけで構成される高比重の商品もあります。

B:組糸タイプ

複合メタルは、Aの撚り糸タイプ一般的ですが、PEラインのように、組糸構造でも作ることが出来ます。
特徴としては、糸が直線方向に組まれており、糸よれしにくい他、ほつれにくく、コスレに対しても非常に強くなります。欠点は、糸径が太くなってしまうことです。

組糸構造

 
【糸径規格制定の背景】

金属糸の太さの表示は、規格がない状態が長期間あり、各社バラバラの表示を行っていたため、消費者にとっては、同じ0.05号でも全く太さが違うといったことが散見される状況でした。
そこで、日本釣用品工業会の釣糸ワーキンググループにより、当時の各社の糸を実際に測定、データ収集を行い、現状販売されているものから大きく変えてしまうと使い手側の混乱が起きることを考慮し、ナイロン・フロロカーボンの糸径規格とは異なる独自の規格を作ることとなりました。

http://www.jaftma.or.jp/standard/pdf/20171227tijk.pdf

尚、この規格は日本釣用品工業会に入会している企業を中心に遵守または遵守に向けて取り組んでいる状況であり、その他の企業や海外のメーカーについてはこの限りではありません。

【まとめ:金属糸の糸径についての基本的な考え方】

以上のように、鮎用のメタルラインの糸径規格は、商品の流通後に制定されたため、制定前の規格で販売されている商品は、規格より太いものがほとんどとなっています。近年発売されている商品の多くは規格に合ったものになってきています。しかしながら、糸径の測り方によっては、測定用のゲージを強く押しつぶさないと規格に入らない太い商品が流通しているのも事実です。
規格を遵守している製品かどうかは、各メーカーに問い合わせれば知ることが出来ると思います。

基本的に、ナイロン・フロロカーボンに比べ、糸径は太いこと。
糸の構造により凸凹があり、直径はあくまでも平均値であるという点を抑えておくと他の糸との違いを理解しやすいと思います。

※フジノラインでは、金属糸は販売していませんが、ポリアリレート繊維にタングステンをコーティングした水中糸「楽鮎メタコート」や「楽鮎ボロンコート」は、金属糸との使い分けに使用されるため、「金属糸の太さ標準規格」に準じた糸径設定となっています。

<糸の太さに関する疑問解決シリーズ>を4回分けて解説してきましたが、いかがでしたか?

特に釣りが初めての方にとっては、難しいと感じられるかもしれません。今後の参考になれば幸いです。